設備工事業界におけるM&A動向
~経産省東北経済産業局ホームページ掲示の事例より~
この中で、弘栄設備工業という山形県山形市の設備工事会社が紹介されていた。同社は1946年創業、1954年に株式会社として設立され、現状、売上高約70億円の有力な工事会社だ。「事例集」によると、同社はM&Aなどによって現在11社12業態のグループを形成している。
M&Aの具体的な内容は開示されていないが、同社ホームページの事業所紹介をみると、宮城県、福島県、北海道を所在地とする、子会社と思われる企業が数社掲示されている。すべて設備工事に関わる企業ではあるが、中にはパイプ洗浄会社もあり、M&Aを通じて営業エリアを拡大しつつ関連業態の事業も広げてきた様だ。
「事例集」では同社のM&Aの目的として、①建設業界は人手に頼る労働集約型産業であり、労働者の高齢化による建設技能労働者の不足など、厳しい状況に直面、②M&Aを展開し、東日本大震災や東京五輪後の市場縮小の環境変化に対応、という2点が記載されている。これらは「事業環境」という言葉にも換言できると思われ、同社に限らず設備工事業界全体にあてはまるものであろう。
これをみると設備工事業界のM&A件数は2018年に大幅に増加し、その後も比較的高い水準が継続している。こうしたM&Aの増加の背景には、「事例集」に記載されていたような「事業環境」に対する危機感の強まりがあるものと推察される。
注:公表ベース(解消案件除外)。(株)レコフデータ資料より作成
2022年に入ってからも同業界に関連するM&Aは継続して活発に行われている(主要な事業承継M&Aは下記参照)。最近の世界情勢を背景にした建設資材価格の上昇などによって、「事業環境」に対する危機感は一層強くなっていると考えられ、難局を乗り切っていくためにM&Aを検討する企業は今後も増加するであろう。
当事者2(売り手側):東名【事業内容:鉄道関連施工工事】
当事者2(売り手側):千代田(千代田工営親会社)【事業内容:基礎杭設計・施工、地盤調査、測量調査】
当事者2(売り手側):オトワコーエイ【事業内容:特殊コンクリート工事業、杭打業、基礎工事など】
当事者2(売り手側):澤田運輸建設【事業内容:クレーン工事】
当事者2(売り手側):サンエイテクニクス【事業内容:設備工事業、省エネ・コスト削減事業】
当事者2(売り手側):HEXEL Works【事業内容:集合住宅向け総合電気設備工事】
当事者2(売り手側):中央電気【事業内容:送電線工事】
(出典)レコフM&Aデータベース((株)レコフデータ提供)