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外食業界のM&A

2023年3月28日

外食業界のM&A
~昨年後半より活発化の兆し~
外食業界のM&A件数(公表ベース)は新型コロナが発生した2020年に減少に転じ、その後、2021年、2022年とも2020年と同様の水準であった(図表1参照)。減少の要因は、コロナ発生によって将来の見通しがききにくくなり買い手側の姿勢が慎重になったためと考えられる。


<図表1>外食業界 M&A件数推移
<図表1>外食業界 M&A件数推移
(注1)公表ベース。「買い手」または「売り手」が外食業界に属するM&A
(注2)レコフM&Aデータベース((株)レコフデータ提供)より作成


2022年後半、外食業界注目案件の動向
しかし、外食業界を巡っては2022年後半から注目を集める案件が発表され始めている。

同年8月、ヤマエグループホールディングス(食品卸、東証プライム市場)は宅配ピザを展開する日本ピザハット・コーポレーションを買収。投資会社から全株式を取得した。日本ピザハット・コーポレーションは、日本でのピザハットのフランチャイザーとして約500店舗を展開している。

9月には鳥貴族ホールディングス(焼鳥屋運営、東証プライム市場)が、サントリーホールディングスの傘下で「やきとり大吉」のフランチャイザーであるダイキチシステムを買収すると発表。「やきとり大吉」の国内店舗数は600店を上回る。

2023年2月にはゼンショーホールディングス(牛丼チェーン等運営、東証プライム市場)が、菓子メーカーのロッテホールディングス傘下でファーストフードチェーン運営のロッテリアを買収すると発表。同社は全国に358店舗を展開している。

この他にも喫茶店や唐揚げ専門店などを対象とする買収が公表されており、この中には会長や代表取締役からの株式取得による事業承継M&Aも含まれている(図表2参照)。


<図表2>外食業界 最近のこの他の主要なM&A
<図表2>外食業界 最近のこの他の主要なM&A
(注1)形態はすべて買収。株取得先の「-」は不詳
(注2)レコフM&Aデータベース((株)レコフデータ提供)より作成


総評
日本フードサービス協会によると2022年の会員企業売上高集計は、2021年に比べて13%増加した。コロナ前の2019年との比較でも94.2%まで回復している。勿論、コロナの影響が払拭されたわけではなく、例えば「パブ/居酒屋」という業態の売上高集計は2021年に比べて81%増加したものの、コロナ前の2019年との比較では49.2%にとどまっている。

一方で、大手外食企業の経営者が「M&Aを再度積極的に行う」とコメントするケースもみられ始めた。今後、外食業界が回復していくことを見込んでのものと思われる。

先月、週末の夜に都内の繁華街を歩いてみると多くの飲食店が来店客で賑わっていた。昨年後半以降の案件をみると、外食業界はM&Aという面でも景色が変わりそうな兆しをみせている。


澤田 英之
執筆者
澤田 英之
株式会社レコフ 企画管理部 部長(リサーチ担当)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)の他、レコフデータ運営のマールオンライン向けなど多数。