MARR Online注目業界動向

2023年1月の注目業界動向

2023年2月1日

CO2排出量が最も多い鉄鋼業界、
M&Aで脱炭素の取り組みを推進
鉄鋼業界が脱炭素に向けてM&Aに動き出している。日本の製鉄の主流である高炉は、鉄鉱石からコークス(石炭)を使って酸素を取り除くため、国内産業の中でCO2排出量が最も多い。国内需要がピークの3分の2に減少する中、海外需要の取り込みを図った鉄鋼業界だが、今後はさらに「脱炭素」が生き残りのカギとなる。脱炭素への移行期では、高炉に比べ排出量の少ない電炉への転換等が進められるが、最終的には石炭を使わず水素で鉄鉱石を還元する「水素還元製鉄」の実現が求められる。

動向

M&Aによる電炉への転換では、日本製鉄が、2022年2月にタイの電炉大手のGスチール、GJスチールの2社を買収している。タイの鋼材需要を取り込み、電炉による生産拡大でCO2削減も狙う。
水素還元製鉄の実現では、神戸製鋼所が、2022年10月にスウェーデンの製鉄会社のH2グリーンスチール(H2GS)への出資を決定し、あわせて米100%子会社のミドレックスが、H2GSから世界初となる商業用の100%水素還元製鉄プラントを受注した。同プラントにはミドレックスがライセンスを持つ製鋼法が使用される。また、H2GSには日立製作所も同年7月にパワーグリッド事業の日立エナジーを通じての出資を決定している。
脱炭素化には、水素の調達、CO2の回収・再利用等のインフラ整備も必要で、異業種連携も含め、今後の動向に注目だ。





出所:株式会社レコフデータ MARR Online
   [マーケットを読む ~今月のM&A状況~] (2023年3月号)より